Manablick

オーストリアのビオワイン農家に嫁いだ元ピアノ講師、高田マナのブログ

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私たちのワイナリーの生い立ち

   

久しぶりのブログの投稿です。子供が産まれる前は割と定期的にブログを書いていましたが、今自分の時間が取れなくて無くて、中々パソコンに向かう事ができませんでした。最近娘のお昼寝の時間が割と決まってきた上に、夜も割と早く寝てくれる様になったのでやっとブログを書く事が出来きました。

今まで私はホイリゲの事については何記事かブログに書いてきたのですが、大事なワイナリー&ワインの事について詳しくはまだブログに書いておりませんでした。今回の久しぶりのブログは私たちのワイナリーとホイリゲの詳細を書こうと思います。

本題を始める前に、この記事には何度も”ホイリゲ’’という言葉が出て来ます。存知の方も多いかもしれませんが、ホイリゲとはオーストリア独特のワイン農家直営のワイン酒場の事です。私のブログでホイリゲの事を詳しく書いたので、興味のある方は是非ご覧ください。

ホイリゲの記事はこちら→http://manablick.net/1458

私たちのゾース村にあるワイナリー&ホイリゲの歴史

夫がワインを作り始める事になったきっかけ

ゾース村のワインベルグ通りに面しているワイナリーはとてもとても短い時間を振り返る、と言っていいかもしれません。

私の夫、Bernhard Plosは以前は全く違う仕事をしていたのですが、10年ほど前に長らく住んだウィーンからゾース村のそばに戻ってきたのを機に、ワイン畑の仕事に興味を持つ様になりました。と言うのも、夫の両親が長らく趣味として手入れをしていたワイン畑の世話を彼も手伝う様になったのがきっかけだったのです。はじめは仕事の傍にワイン畑の仕事をしていた夫ですが、次第に本格的にワイン畑の仕事をする様になり、やがてはその葡萄を作ってワインを作りたいと思い始めました。夫がワインを作り始めるまでは、収穫した葡萄は他のワイン農家にあげていたのです。一年かけて世話をした葡萄を自分の手でワインに加工して味わってみたい、と思うのは当然のことかもしれません。義父はずっとそう願っていて、夫がその思いを受け継いだのです。

ワインを作り始める事になった夫。そしてどんどんワイン作りにはまる。

ワインを作る為に必要不可欠な専門的な機械等(醸造用タンク、赤ワイン用の樽、除梗機、圧搾機、等々..)を購入した2008年の秋、夫は初めて自分たちで育てた葡萄でワインを作り始めました。”ワインを作り始めました”と簡単に書きましたが、夫の場合はワイン作りを全て独学で始めたのです。本人曰く”Lerning by doing” つまり実践による学習、または試行錯誤しながら学んだとの事。とは言えワイン作りは中々複雑なので、そんな訳がない、一体どうやって学んだのだとしつこく色々聞いた所、学生の頃に1セメスター化学を学んだとの事が判明し、それを聞いて少し腑に落ちました。ワイン作りは化学の知識が多いに役立つので、学生時代に化学に興味を持って良かった様です。もちろん後は専門書を読み漁り、そして数々の失敗から多くを学んだ様です。それからゾース村にはワイン農家が沢山いる上に、夫の叔父、従兄弟、幼馴染等もワインを作っているので、何かと助けてもらったのではないかと思います。

↑初夏にワイン畑で働く夫。

さてワインを作り始めたのが2008年ですが、その時はまだ二種類ほどのワインしか作っていませんでしたが、少しずつ色々な種類のワイン畑を増やして行きました。オーストリアでは一つ二つのワインの種類を作るワイン農家は非常に稀でして、10種類ほどのワインの種類を扱っているワイン農家が多いです。つまり所有しているワイン畑も一山または一丘丸々自分の物、と言うのは珍しく、あちこちのワイン畑を所有しているのが普通です。この種類のワイン畑は自宅から徒歩3分の所、あのワイン畑は徒歩10分の所..と言った感じです。

ホイリゲを始める様になったきっかけ

義両親は自分たちの育てた葡萄でワインを作りたいと思っていた願いと共に、もう一つ長年思っていた願いがありました。それは自宅でホイリゲを開けたいという事でした。自分たちの葡萄でワインを作る様になったんだから、ホイリゲも開く事が出来るのではないか本気で思い考え始めた夫と義両親。早速2011年に自宅の庭に専用のバーカウンターを作り、テスト的に春と夏の短い期間だけホイリゲをオープンする事にしました。因みにゾース村のどこのホイリゲも春、夏と暖かい季節は外で飲食を楽しむことが出来ますが、外に専用のバーカウンターがあるのは家のホイリゲだけです。

2011年にテスト的に暖かい季節だけオープンした所、順調にお客さんが来てれるようになりました。2012年からは自宅の一部を改造して室内でも飲食を楽しめる様にし、一年を通してホイリゲを開ける様になりました。今から8年ほど前の事です。

↑ホイリゲの庭。暖かい季節はこの様に外の席で飲食を楽しんでもらえます。左奥に見えるのが外専用のバーカウンター。

現在作っているワインの種類

さてはじめは2種類しか作っていなかったワインですが、ホイリゲを開ける様になってから、今現在扱っているワインとほぼ同じ種類のワインを作る様にもなりました。私たちが今作っているワインの種類は下記の通りです。

赤ワイン↓

  • ツヴァイゲルト
  • メルロー
  • カベルネ・ソーヴィニョン
  • ポルトギーザ

白ワイン↓

  • ノイブルガー
  • ピノ・ブラン
  • ミュラー=トゥルガウ(リヴァーナー)
  • グリューナ・ヴェルトリーナー

今年の秋からはリースリングとムスカテーラーが加わる予定です。あとは上記に記したワインでロゼ、それからデザートワイン、なども作っています。先ほど書いた様に、はじめは二種類のワインしか作っていなかったので、当然はじめは二つのワイン畑しか所有していませんでした。現在は10種類ほどのワイン(本当はもっとありますが、数種類のワインを混ぜで発酵させるゲミュシュターザッツなどは固有の種類と数えてません)を作っているので、それにそれだけのワイン畑を所有している事になります。しかしどのワイン畑も徒歩5〜15分ほどで行ける距離にあります。これは凄く都合が良くて、どのワイン畑も家から近いのですぐに様子を見に行けるという利点があります。

↑ゾース村の丘の上からの風景。ワイン畑がひたすら広がっています。

ビオワインを作る様になったきっかけ

さて、これまでワインを作る様になったきっかけ、ホイリゲを開ける様になったきっかけ、そしてワインの種類を説明して来ました。あと一つ、私たちのワイナリーを説明するのに欠かせない事は、私たちのワインはビオワインであるという事です。ビオとはオーガニック又は有機栽培の事です。日本ではオーガニックという言葉の方が幅広く使われているかもしれませんね。(ヨーロッパでは有機野菜やオーガニック製品しか売っていない”ビオスーパー”なども多くあります。)

2008年に夫がワインを作り始めた頃はまだビオワインではありませんでした。当時は自分たちのトラクターも持っていなかったので、夫の叔父さんに農薬の散布などをお願いしていたのです。夫がワイン作りを始めてから、叔父さんから譲り受けたワイン畑もあります。その畑も当然ながらビオではありませんでした。

ワイン作りにも慣れ、ホイリゲをオープンして数年が経ち少し落ち着いて来た2015年、ずっと試したいと思っていたビオワイン作りに夫は挑戦する事にしました。ビオはヨーロッパでは今ブームとも言えるのですが、ビオワインを作っている農家はまだまだ少ないのが現状です。理由としてはやはりリスクが大きい(強い化学的な薬を散布出来ないので病気になる可能性が高い)、そしてビオの認定を受けるのが中々面倒であるからという点が大きい様です。ビオの認定を取るには、専門機関の人に年に何度か畑やワインセラーを見てもらい、必要な書類を提出しなければなりません。そしてそれを3年続けてやっとビオの認定が取れます。この作業が中々面倒なのでビオワイン作りに踏み出せないワイン農家も多いのでは無いかと思います。しかし味だけでなく、ワイン畑周辺の環境にも負担が少ないワインを作りたいという希望から夫は今もビオワインを作っています。

まとめ

今回は初めてワイナリーとホイリゲの生い立ちを書きました。私たちのホームページにも簡潔にワイナリーとホイリゲの事が書いてあります。このブログに使用していない写真も載っているので、興味のある方はご覧ください。ホームページはこちら→http://www.plosweinbergstrasse.at/JA/index.html

次回はワイン畑の一年を通しての仕事、そして四季のワイン畑の様子について詳しくブログを書く予定です。どうぞお楽しみに!

 - オーストリア, オーストリアワイン, ホイリゲ, ヨーロッパ, ワイン

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