Manablick

オーストリアのビオワイン農家に嫁いだ元ピアノ講師、高田マナのブログ

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植物に関する仕事をするという事

   

昨年の今頃、私はまだドイツで実習生として園芸センターで働いていました。そして今はオーストリアのワイン農家として働いています。昨年と比べて随分と環境が変わったのですが、植物関係の仕事という点だけは共通しています。

私が園芸の実習を始めたきっかけはこちらのブログで以前紹介しましたが、音楽をずっとやっていたのに色々あって急に違う道に進む事を決意したのが3年前程の事です。音楽を止めて、じゃあ何をしよう?と悩んだ時にすぐに思いついたのが「植物関係の仕事」をしようという事でした。私は子どもの時から祖母や母の影響で植物を育てる事が大好きでした。小学生高学年の時の愛読書はNHKの趣味の園芸でした。園芸の本ばかり読んでいて、勉強をなかなかしないと母に怒られた事もありました。高校から音楽科に進んだので、園芸に没頭する時間はその当時からあまりなくなったのですが、それでも庭で花を育てるのはいつも私の楽しみでありました。

実家には昔ながらの良い庭がありました

 

子どもの頃から趣味は園芸。ドイツにて理想と現実の差を知る

冒頭に書いた通り私は子どもの頃から花や様々な植物を育てる事が大好きでした。特に花がまだ殆ど咲いていない状態の苗を買って、植木鉢に植えてから花が綺麗に咲くまで育てるのがとても面白かった。丁寧に育てるとそれにちゃんと答えてくれるのが凄く嬉しかったのです。でも子どもの時、もちろんその苗達がどうやって育てられてきたものか、なんてまったく未知の世界であり、考えた事も殆どありませんでした。

ドイツに渡り、園芸の仕事をするようになって裏方を見る事が出来ました。始めは「こんな風に花達が育てられて行くんだ!」と感動する事ばかりでした。でもその感動と感動の間に、疑問に感じる事が少しずつ増えて行きました。一番驚いたのは、かなりの量の農薬を使っている事でした。それは私が働いていた所が特別酷いのではなく、有機農法でも無い限り園芸界や農業でも普通な事なのだと思います。しかし当時私はドイツといえばエコ!というイメージが非常に強かったので、仕事場で農薬をじゃんじゃん撒いているのを見たときはかなりの衝撃を受けたのでした。大量に育てるから仕方ないのだろうと、その現場を見る度に自分に言い聞かせていました。しかし数年働いても、どうしてもそれに慣れる事が出来ませんでした。そもそも大量に生産するから大量に農薬を撒かなくてはならないのです。もうちょっと少量を丁寧に育てれば良いのに..と常々思っていました。そんな事言ったら仕事場を追放されちゃいそうなので、もちろん言いませんでしたが…そして大量に苗を生産をするので、全部売り切る事は不可能です。どうしても余ってしまう苗がある。では売れ残った苗はどうなるかというと、捨てられる運命にあります。始めは本当に胸が痛みました。お花さん、ごめんね。本当は育ててあげたいのだけど、命令なのよ…と心の中で言いながら捨てる作業をしてました。幸い広い土地を持った園芸センターだったので、捨てられた花々は土地の隅の方の林に捨てられ、行く行くは土に帰って行く事が出来るのがせめてもの救いでした。

植物が好きだから植物関係の仕事に就いた訳ですが、そこで私は大量生産の現実を見る事になりました。何だか皮肉だと思いました。人々を幸せにするための花を育てる為に人工的に農薬や肥料を与えられ、余れば捨てるというサイクルを見て、私は自分の感覚が麻痺していくのでは無いかと、それが一番怖かったです。

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そんな時に出会ったワイン農家

そんな現実に疲れた頃にたまたま出会ったのが夫のワイン農家。昨年一週間程ファームステイさせられた時に、当時の職場と180度違った働き方をしている夫を(当時は勿論夫じゃなかったわけですが)見て思わず「あれ?こんな働き方と植物への接し方があるのね。」とこれまた驚いてしまったのです。

何が正反対かというと、まずワイン畑の規模が小さいので全て手作業で行う。そして有機栽培であることです。有機栽培というのは手間がかかるのですが、何故夫がその方法を選んだかと言うと、自分の健康のため(農薬を散布する時に自分にかかったとしてもなるべく害が少ないのが良かったそう)それから規模が小さいから手が行き届くので有機栽培もしやすかったからだそうです。これは大量生産と真逆であるので、あんぐり開いた口が閉じませんでした。好きな植物を扱う仕事であり、自分の考えと合うやり方っていうのもあるじゃないか、と。

ドイツでは一番下の立場で、され更には園芸業会の事も良く知らないまま働いていたので、仕方ないかという諦めモードで働いていたのですが、ちゃんと自分が納得出来る場所というのも探せば(私の場合偶然のようなものでしたが)あるのね!という事に驚きを隠せませんでした。やはり何かを作ったり売ったりする時は、自分もそれを食べたり使ったりしたいものを提供出来ると、とても気持ちが良いものです。夫は自宅で晩酌をする時は、ほとんど自分のワインを飲んでいます。勿論味を確かめる為もありますが、自分のワインが好きなので飲んでいる所も大きいようです。

ドイツで学んだ事は多かった。それは世の中綺麗ごとばかりじゃないという事

当時の園芸センターで、あれ以上長く働かなくて良かったとは思っているのですが、あの2年反で学んだ事は沢山ありました。幾つかは、厳しい上司の元で精神的に鍛えられた、という事もあるのですが、それは私個人的な事なので今は良いとして….。

先程書いた通り、園芸センターで私は大量生産(もしくは資本主義と言って良いかもしれない)の現実を見ました。春から秋にかけては東欧から季節労働者も来ていて、搾取的と言っても良いかと思う働き方を身をもって経験しました。

しかしこれは勿論園芸に限らず、食べ物全体や洋服や家具などにいたるまで同じ様な事が言えるのだろうと気付いたのです。安くて綺麗なものは(時には高いものでも)安全じゃないのだなと。だからと言って敏感になり過ぎても疲れてしまう。けれど現実を知るという事も大切だと、あの厳しい実習生生活を通して学ぶ事が出来ました。

同じ価値観を持った夫と一緒に働けて、今は幸せだと思っています。勿論大変な事もあるけれど…でも自分たちが好きな物、手をかけた物を他の人に提供できる事がとても嬉しいです。

最後になりますが、勿論私は園芸というものを否定する為にブログを書いたのではありません。今でもお花は大好きです。しかし安い花の苗を見る時の見方は変わりました。安さの裏には何か隠されているのです。それは食べ物でも同じ事です。この世の中だから仕方ないと諦めないで、自分の納得の行く物を買ったり、場合によっては提供出来るようになったら良いと思うのは、あまりに非実現的でしょうか。

 

 

 

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 - Ausbildung, オーストリア, ワイン, 人生観, 園芸, 環境, 自然

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