Manablick

オーストリアのビオワイン農家に嫁いだ元ピアノ講師、高田マナのブログ

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これからちょっと楽しみな事・・・村でこれから始まる生態系維持のプロジェクト

      2019/03/22

これからちょっと楽しみな事・・・村でこれから始まる生態系維持のプロジェクト

 

暖かい日差しが一日中降り注ぐ日がが数日続いたと思ったら、又冷たい風が吹く日が来たりしつつも、確実に春が近づいてる感じがする3月中旬。春の始めのこの季節は私のとても好きな季節の一つです。毎日少しづつ春めいてくるのを感じるのはとても気持ちが良いものです。この辺りは日本の様に桜の木はないけれど、その代わりにアーモンドや杏の樹々が春の始まりを教えてくれます。

↓アーモンドの花々。近くで見るとまるで桜の花の様。

 

さてこの季節はワイン畑の中を散歩するのにはとても良い季節です。葡萄の樹々が芽吹くのはもう少し先ですが、ワイン畑の間を小さな花々が顔を覗かせる様になります。それに伴って蝶や蜂なども忙しそうにワイン畑の中を飛び回り始めます。日本では見た事がないけれど、マルハナバチ(Hummel)と言うミツバチに似た蜂を春になると良く見かけます。この蜂は刺す事がない様上に、見た目もまん丸で可愛らしいです。この間散歩中に、ワイン畑で元気そうに草花の間を飛んでいるマルハナバチを見つけて、なんだか嬉しくなりました。それと同時にドイツで働いていた頃の事をふと思い出しました。

ブログでも何回か書いていますが、私は昨年の初めまでドイツのブランデンブルグ州の園芸センターで実習生として働いていました。そこの園芸センターは販売スペースは勿論ありますが、温室にて季節の花々を育ててもいました。つまり直売の様な形も取っていたのです。春になると特に華やかな様々花が温室に溢れます。温室は温度や湿度調整の為に屋根を開け閉め出来るので、天気の良い日に屋根が開いてると蝶々やマルハナバチの様な蜂が花の蜜を求めて温室に入ってくるのです。初めの頃私はそれを’’花に蝶や蜂が集まってきて綺麗な景色’’と思って眺めていました。しかし、しばらくすると花々の鉢の周りで死んでいる蝶や蜂が多い事に気が付き始めました。始めはたまたま鉢の横で死んでしまったのかと思っていましたが、どうやら違うことに気づいたのです。だって死んでいる虫の数がやたら多い…。そこでハッとしたのは、農薬によって死んでしまったのではないかと言う事です。温室の中の景色は良いものです。色んな色の花々が所狭しと並んでいるのです。まるで花畑の様です。しかしその花々は商品なので、美しく保つ必要があります。なので当然ながら農薬を撒く訳です。その園芸センターは中々大きな面積があったので、農薬も毎日の様にどこかしらで撒かれていました。私は虫達が死んで行くのはその農薬が原因であろうと確信に近いものを持ちました。何度も弱りかけたマルハナバチを鉢の上で見つけて、助けてあげたいと思いましたが、どう助けて良いのか分からず、見殺しにしてしまった事もあります。園芸が環境に悪い事でもある事を痛感した体験でした。

↓何度見ても綺麗は綺麗…。前職場にて

 

 

とは言え、矛盾してる様にも聞こえますが、ドイツでは虫や鳥を大事にする傾向がある強まっている様でもあるのです。それはドイツに住んでいた頃、環境保護団体のホームページを見たり、後は職業訓練学校の授業でもその様な事を聞きました。近年壊れかかっている生態系を何とか保護し様と言う動きなんだと思います。現代社会の歪みを直そうとう動きが確実にあるのにも関わらず、前職場の様に’’大量生産’’の方針を全く変えていない企業もあるのが皮肉でもあると感じでしまいますが..。

そしてそれは今私が住んでいるオーストリアで、生態系を守ろうとする動きがあります。と言うのもついこの間、夫から喜ばしいプロジェクトが進行中である事を聞いたのです。私が住んでいるのは一面ワイン畑が広がる非常に長閑な村です。私からすると、様々な鳥や虫が多いなと思うのですが、この村で生まれ育った夫曰く昔はもっともっと多くの鳥がさえずっていたし、虫の種類も多かったと言うのです。それは夫だけが感じているのではなく、多くの村の人が感じている様なのです。そしてそれに危機感を持ったこの村の植物のエキスパート(植木屋さんなのですが)がこの地区のワイン農家に声を掛け、あるプロジェクトを始めようとしているのです。どの様なものであるかと言うと、虫が喜ぶ特別な様々な花々の種をワイン畑の一角に蒔くのです。一つや二つのワイン農家が参加するのではあまり意味がなく、この地区全体のワイン農家が参加する事が大切になってきます。どのワイン農家も自分たちのワイン畑の一角にその特別な種を蒔く事から始まります。一体どんな草花なのか、私もまだ見ていないので分かりませんが、虫が好きな蜜を沢山持った草花なのかと想像しています。あちこちのワイン畑にそれらの草花が咲くようになれば、蜂や蝶々は喜んでワイン畑を飛び回る様になるのでしょう。しかし蒔く→すぐに虫が増える。と言う訳ではないので、沢山の蜂などの虫が来る様になるには数年かかる様です。虫が増えるとどうなるかと言うと、虫を食べる鳥の数も増えるのです。と言うか増える事をみんな望んでいるのです。

ここは長閑な村ですが、それでも近年新しい家が随分と建てられる様になったのです。後継がいないワイン農家はワイン畑を売って、そこに家が建ったりもします。きっと昔はもっともっと長閑だったのでしょう。そんなもっと長閑でもっと自然が多かった時代を知っている村の人々が小さな試みを始める事にしたのです。私はこれを聞いた時はとても感動しました。何て素晴らしいプロジェクトなんだ!と。それに私達も参加出来るからより嬉しい。まだ手元に種は届いていないのですが、夫はどこに蒔くか今から考えている様です。

自分が好きだからと言う理由で園芸の仕事を始めてみたら、生態系を崩すかの様なことが仕事を通して行われるのを目の当たりにしてショックを受けた経験があるので、よりこの様な小さいけれど生態系を戻そうとするプロジェクトに自分たちが関われるのがとても嬉しいです。きっとすぐには目に見える様な変化はないかもしれないけれど、こうやって少しづつ自然と農業が共存するより良い形が出来てくると良いなと思っています。

 

 - Ausbildung, Berufsschule, オーストリア, ビオワイン, ヨーロッパ, 人生観, 園芸, 環境, 環境保護, 自然

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