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オーストリアのビオワイン農家に嫁いだ元ピアノ講師、高田マナのブログ

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ドイツの園芸センターでの仕事〜どのように花の苗を生産しているか

   

園芸センターでの私の仕事〜どのように花の苗を育てているかを紹介

ベランダや庭先に季節の花が欲しいと思った時、皆さんはどうしますか?多くの人はホームセンターや園芸センター、花屋さんなどへ行って花の苗を買い求めるのではないでしょうか。ホームセンターや園芸センターでは小さなポットに入った様々な花の苗が売っていますよね。ではその苗がどのようにして生産されているか考えた事がありますか?

私の仕事場は園芸センターです。販売もしていますが、生産も同時にしています。直売という感じですかね。子供の頃から園芸が好きだった私ですが、この仕事をするまで花の苗がどのように生産されているのか知りませんでした。

今回は私の仕事場で、どのように花の苗を生産しているかを紹介したいと思います。

1: 発芽したばかり、又は挿木したばかりの小さな苗を購入する

私の仕事場では基本的には種まきはしません。種まき、または挿木により小さな苗を生産するのが専門の会社があるので、その会社から苗を購入します。小さな苗とはこんな感じの苗です。

これらの若い苗がどの様な状態になっているかというと、もう一つの写真をご覧下さい↓

種まきトレーに蒔かれた種が発芽した状態で送られてきます。

ドイツ語ではこれらの小さい苗を”Jungepflanzen(ユンゲ プフランツェン)”と呼びます。直訳すると「若い植物」です。このJungepflanzenを専門に扱っている会社があります。

2:小さな苗を鉢に植え替える

トレーに植えられたままでは、植物が大きくならない所か枯れてしまいます。綺麗に花を付けてもらい、お客さんに売る様にするにはちゃんとした鉢に植え替えなければなりません。ここからが私達の仕事となります。

温室の中一面に新鮮な土が入れられた鉢が一面に並べられます。その鉢にひたすら小さな苗達を植えて行くのです。もちろん手作業でです。下の写真はビオラの苗です。私の仕事場ではビオラやパンジーは3月初旬から売り出されます。この写真は10月に撮ったので、売り出される5ヶ月ほど前から準備する訳です。この小さい緑の苗はぜーんぶビオラの苗です。

そしてもう一枚。下の写真↓は菊の苗です。ちょっと分かりにくいですが、菊は手前の小さい苗です。奥の赤い花々はゼラニウムです。ドイツでも菊が人気なので驚きました。ドイツ人に「ドイツに菊があって驚いた。」と言うと「日本にも菊があるのね?」と言われた程、ドイツの秋には欠かせない花です。菊は9月くらいから売り出されます。そのため5月から苗植え始めます。4ヶ月前程から準備をする事になります。

菊にしても、ビオラにしても、数ヶ月経って花が咲き始めたらこの鉢のままお客さんに売り出します。

3 :植え替えたら必ずたっぷり水をやる

植えかえ後の水やりはとても大切です。上の菊の写真ですが、これはまだ水をやる前の状態なので土が乾燥してます。かならず表面だけでなく、土全体がしっかり湿るように水をやらなければなりません。夏場に水をやる作業は涼しくて気持ちが良いのですが、冬の水やりは凍えそうで中々キツいです。ちなみに冬場は午後には水やりをしない様にします。土が凍ってしまうのを防ぐ為です。とはいえ、マイナス5度10度になると、よく凍ってますけどね、、。

4: 植物が成長してきたら鉢を移動させる(鉢と鉢の距離を取る)

小さな苗を植える為に用意される鉢は、基本的に隙間無く並べられて行きます。苗が小さいうちは良いのですが、それぞれの植物が大きくなると風通しが悪くなり、しまいには病気が発生してしまいます。そこで植木鉢同士の距離を取る様に移動させて置き直します。移動というと簡単に聞こえるとは思うのですが、12センチの大きさの鉢が12個載せられるプラスチックのトレイに入れ、他の場所へ移動させて行くのは、結構重くてちょっとした重労働です(汗)

5: 摘心、花柄摘みなど、花を綺麗に咲かせる為の手入れ

私の仕事場では様々な種類の花々を育てているのですが、それぞれの季節にはメインの花があります。

: ビオラ、パンジー、プリムラ

初夏: ゼラニウム、ペチュニア

晩夏〜秋:

冬: ポインセチア

大雑把に分けるとこんな感じです。もちろん、これら以外にも様々な植物を扱っています。

具体的な世話 ① 菊、ポインセチア: 摘心

例えば今(5月)は菊の花の準備をしています。菊は基本的には挿木で増やします。これは上記に書いたのとはちょっと違う手順になります。挿木をして数週間〜1ヶ月ほど経つと新しい葉がどんどん出てきます。そこで放っておいても花は咲くのでしょうが、綺麗な形にはなりません。脇芽を出して、美しいフォームにするには摘心をしなければいけません。

それからポインセチアも摘心が必要です。ポインセチアはクリスマスに欠かせない植物ですが、11月〜12月に売り出すには5月の下旬から小さな苗を植え始めます。ポインセチアも摘心をしないと、こんもりとした綺麗な形にはならず、ただ上にどんどん伸びて行ってしまうのです。

具体的な世話② パンジー、ビオラ 、ゼラニウム

パンジー、ビオラの小さな苗は本当に小さくて、本葉が出て来た状態で送られてきます。小さな苗なので、売り出すまでに時間もかかります(4〜5ヶ月ほど)しかしまだ小さい状態なのに、すぐに花を付けちゃうんですね。やったあ、もう花が咲いた!綺麗だわ〜。と眺めていると、マイスターから「これらの花々を全部摘み取っておいて。」という指示が。なんで?と思いましたが、花が咲いてしまうと、栄養が花に取られてしまうんですね。まずは株を大きく、しっかりしてから花を付けてもらわないといけないので、小さいうちに咲いてしまった花は、どんどん摘んで行きます。この作業は寒い冬に行うのですが、バケツ一杯になった花々は数カ月後の春を予感させてくれます。

具体的な世話③ ペチュニア、バーベナ

ペチュニアやバーベナは初夏から秋にかけて、庭先やベランダを色とりどりの花々で楽しませてくれます。下に垂れて行く性質があるので、ベランダなんかに丁度いいんです。この初夏に欠かせない花達ですが、お客さんに売る前に大きくなり過ぎて美しいとは言えない状態になってしまう事があります。成長が早いんですね。そのような場合はハサミで短く切り込みます。下の写真はバーベナです。この写真の例は、葉が茂り過ぎて、花が少ないんですね。まだ株もあまり大きくなってないので、ここで一度短く切ってあげることにより、再び葉が出て来る時には株自体も大きくなっているので、しっかりとして綺麗な状態に葉と花が付く様になります。

短く切るとこんな感じになります。↓

この写真はバーベナですが、ペチュニアも同じ様に行います。ご家庭でペチュニアやバーベナ、その他色々な植物もなのですが、株が大きくなり過ぎたり、花の最盛期の後に葉ばかり茂って、花が咲かなくなってしまったら一度思い切って短く切ってあげて下さい。勿論切り過ぎはダメですが、けっこう思いっきり切っちゃって大丈夫です。そうするとまた新しい葉がどんどん出て来て、蕾も付けてくれますよ。

6: 販売

小さな苗を4〜5ヶ月かけて育て上げ、綺麗な状態になった所でお客さんに売り始めます。今の季節(5月)はお客さんが凄く多いです。園芸日和なんでしょうね、やっと暖かくなって来て多くの人が花々を求めに来ます。どんどん売れてくれると嬉しいのですが、その時々によりますが、売れ残ってしまう花々がどうしても出てきます。特にポインセチアなんてはクリスマスが過ぎると売れません。季節外れになってしまって、売れ残ってしまった花々はどうなると思いますか?これは大変心が痛むのですが、捨てるしか無いんです。仕事を始めたばかりの頃は、いつもこの「捨てる」作業はとても辛かったです。

幸いにも、私の職場は非常に長閑な場所にあり、土地が広いのです。捨てられた花の苗達は、大きなゴミ箱に捨てられた後、まとめて仕事場の奥に捨てられます。つまり土に返すんですね。いつも苗を捨てるときに思うのですが土地の少ない日本だと、どうているんだろう..と。ゴミになってしまってるんでしょうか..。私の職場は何度も言いますが非常に長閑な場所にあるので、土地も余裕があるのです。植物好きな私には辛い仕事ですが、悲しいもので少しずつこの仕事にも慣れて来てしまいました。「そのパンジー、全部捨てといて。」「はーい。」という感じで。仕方ないですねえ、いちいち泣いてても仕事にならないし…。

↑色とりどりのゼラニウム、吊るし鉢の植物はベコニア

まとめ

いかがだったでしょうか?あちらこちらで売られてる花の苗は、見えない所で誰かが手作業で手入れをしたものなんです。私は日本では園芸関係の仕事をした事がないので、日本の園芸事情は分からないのですが、おおまかな作業の流れは同じなんじゃないかと思います。

本葉の頃から知っている苗達を、お客さんが嬉しそうに手に取って買って行くのを見ると、私も心から嬉しくなります。買われた先で綺麗に咲いてね!という気持ちで売られて行く苗達をいつも見送っています。

みなさんも花の苗を買う事があったら、長い道のりを辿ってやっと綺麗に花を咲かせているんだと、少し苗の辿って来た時間に思いを馳せてみてみて下さい。より健気にその花の事を感じられるんじゃないかな、と。

 

 

 - Ausbildung, 園芸, 自然

Comment

  1. Akane より:

    こんにちは、
    初めまして、あかねと申します。
    まなさんのブログをいつも参考にさせて頂いています。
    ありがとうございます。

    ドイツでAusbildungをするためにビザを申請する際に関して質問がありコメントさせて頂きます。
    提出書類に、銀行の残高証明や、経済負担誓約書等の書類は必要でしたでしょうか。
    まなさんのご経験からご教示いただけますと大変幸いです。

    宜しくお願い致します。

    • manatakata より:

      こんにちは。ブログを読んで下さってありがとうございます。
      私のケースですが、まず一番最初に申請した際はそのような書類は提出しませんでした。
      一度ビザを却下された後異議申し立てをして、その後やっとビザが貰える事になり、その際に銀行関連の書類を提出しました。私のケースは又ちょっと複雑なので、
      詳しくは、「ドイツ外国人局との奮闘記」シリーズのブログで書いたので参考になればと思います。→ http://manablick.net/914

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